2019年7月25日木曜日

グランドジョラス北壁 















グランドジョラス北壁
何とか妻を説得して、昨年に引き続き今年もグランドジョラス北壁にチャレンジ。

7月23日 成田発
7月24日 ミラノ着 レンタカーにて シャモニーへ移動


7月26日 ロープウェイにて、ミディーに登る。

















シャモニーはいつ来ても綺麗な街。
ミディー展望台へのチケットを下町の売り場で購入。長期滞在の予定なら、街の交通機関も乗車可能な共通券を期間券を購入すると幾分安価です。とりあえず3日券を購入。
天気が良ければ、ミディー付近の岩場の試登を考えていたが、天候が悪かったため展望を楽しむのみで下山。

7月28日 出発準備
シャモニーのガイド協会に行き、下降路のボカラティー小屋のTELを聞き出し、イタリア側のノーマルルートの雪の状態を確認し、問題ないとの情報を得、小屋の宿泊の予約を入れる。
近年、猛暑の年は下降路がクレパスで分断され、登行禁止となるので、8月以降に通行する場合は事前に確認が必要だろう。
アプローチのレショ小屋については、7月末の土日がお祭りということもあり、宿泊不能だった。

<1日目 7月29日>
天候の判断については、ずいぶんと悩んだ。
長期予報では予報の発表以後、好転 / 悪転の可能性があるが、自分なりに予報を一定期間モニターし、予報日から3日以内であれば降水確率の変動は20%の範囲に収まると判断した。降水確率30%までが晴天とすると、7月30日~1日にかけては、天候が良いと予想。

08:30
シャモニ駅始発のケーブルカーで終着モンタベールへ移動。
駅から氷河へ向かう登山道を下った後、約200mの恐ろしい梯子を下り氷河へ着く。1、800m
そこからは約4時間、なだらかに続く氷河を歩く。
少しづつ高度を上げ標高2、300mのレショ小屋の麓に着く。(15:00)

予約の電話では、営業していないはずだったが、小さく人影が動いているのが見える。
避難小屋は営業スペースとは別に臨時の部屋が確保されているので、そこで一夜を過ごそうとも考えたが小屋へ行くには、200mの梯子を登らなくてはならない。
明朝の暗中での下り、食事等のサービスが受けられないなら、無駄骨であると判断し、小屋へは行かず、取りつき方向に向かう。

ここからの登りは、急登となる。2、300mから3、000mの氷と雪のミックス帯を約3時間で登る。
氷河上にはクレパスが発達、キワドイ登りを続けながら取り付きにたどり着く。(多分引き返せない)先行のパーティーのトレースは、クレパスを1mもジャンプしている箇所がある。我々はロープを付けるまではしたが断念し遠巻くが、それでも怪しいスノーブリッジを幾つか渡ることとなる。
近年における本ルートのシーズンは6月から7月中旬までのようで、8月に近い時期では、しょうがない。。。

取りつき着(18:00)
取り付きに付近の雪面に安定している場所がなく、日没は午後10時近くでまだ時間があるので、難しい1Pを登り、4,5P進んだ岩場でのビバークをすることにした。
夜中の気温5℃、風は微風。
鍋でラー麺を茹で、夜景を見ながらの食事。
トポ上ではビバークができる場所ではなかったが、
小さくなって横になれるような棚を個々に見つけし就寝。
本来の予定であれば快適なレショ小屋泊であったが、
今日登った分、明日が楽になることを思えば、我慢もできる。
就寝22:30(約3、090m)















<2日目 7月30日>
0630起床 0730発
3級程度を微妙に左上しながら数P登りレビュファクラックにたどり着く。
この間、終了点以外は、ほとんど支点がないのでルートファインディングが難しい。
至る所にルートを外し退却に使用した支点がある。ルートを見誤ると行詰まり、大きなタイムロスとなる。レビュファクラック場所、岩の形を正確に記憶すると良いだろう。
レビュファクラックは、5.8くらい(体感)だが、水8Lを含む荷物を担いでの登りとなるので苦しい。


















クラックの後に大テラスあり、テントも張れるほど広い。
その後、2Pのトラバース。上下2通りあるが我々は上側を行く。
快適なスピゴロウォーカーを抜けた後、75mジェードルに入る。おそらくここが、ウォーカーで一番難しかっただろう。
見た目は傾斜だがゆるそうに見えるが、登ってみるとほぼ垂壁。
5.8~9(体感)荷物が重い。 その後2~3P登る。
















次のPは判断が難しい。15m登った後右へ20mトラバースする。トラバースの目印はなく、初見の印象では右にルートが取れるようには見えないため、そのままクラック沿いに行ってしまいそうになる。
20mラッペルした後、1P上がると、右側に2人が横になるのに十分なテラスに到達する。
今日はここにて終了し、ビバーク。(19:30)

3日ほど前に雪が降ったようだが、奇麗な部分を取り、鍋で沸かして水を補充する。
昨日と比較すれば、かなり良いテントサイトだった。
もう少し早くたどり着く予定だったが、レビュファクラック手前で迷い、間違ったルートを2Pも行き来し3時間ほど浪費しまったことが悔やまれる。それがなければ、ゆっくりと夕暮れを眺めることができただろう。到着が予定より遅くなってしまったが、今日は横になって寝られるのが嬉しい。
就寝23:00(3、550m)

<3日目 7月31日>
07:00起床 08:30出発
日の出は概ね7時。朝食は、毎度赤飯のアルファ米200gづつを鍋で戻し、ごま塩をかける。
山の中では、濃い味の物が続くと飽きがきてしまうが、白米では味気なさすぎるので、間をとって赤飯とした。なかなか良かった。締めに卵スープ。
クラック沿いに2P程度登る。
傾斜の落ちたガリーを大テラスまで進む(ビバーク可)
大テラスからは、4~5mほど登った後、左に20mトラバース
その後、左上気味に登り、次のピッチでリッジに出る。


















快適なリッジ沿いに5~6P登り、三角雪田に到達
氷の詰まったクロアールは、最後2P程度は溝に沿って登る必要があるが、中心は固い氷なので、アイスクライミングをするか、周りの岩を登るか、迷うところだ。
我々は、軽量化を重視したため、固い氷を登るには不向きなハイブリッド・アイゼンを選択していたため、氷を避けつつ岩を登った。



どちらを選んだにせよ、ここの2Pは傾斜が強く難しい。
クロアールから右のクラックに移りテラスに到着、3日目終了(20:00)

標高が高いため、至る所に氷があり、水を取るのに不自由なし。
食料については、簡易で軽量の物を選んだが、量については食べたいだけ食べ、飲みたいだけ飲めるよう、少量に抑えないようにした。そのためなのか疲労感もそれほどなく、最終ビバーク地までたどり着く。



3日目のサイトは、2人が寝るのにジャストサイズ。
下部のビバーク時では夜中、唸りを上げながら落ちる落石の音に不安を感じたが、ここまで上がって来ると、その数も減り心配もなくなる。
期間を通して微風・晴天が続く。
就寝23:00(3、980m)

<4日目 8月1日>
07:00起床 08:30出発
高所トレーニングの効果なのか、頭痛や息切れ等の高度障害は全く感じない。
テラスからは、少し難しく見えるスラブを10m登り、右へ40m水平トラバース。
ガリー状に沿って3~4Pほぼ直登する。右上するルートを外すので、行けそうであっても右に行き過ぎないよう注意が必要。
















その後は、左側の岩稜に沿って3~4P登る。終盤は雪と氷が出てくるので、最後の2P程度はアイゼンとバイルで登る。雪に埋もれた岩を掴んだりもするが、浮石が多い。
不安定なMIX帯を直情して行き、いよいよウォーカー稜の頂上に到達。
4,200m(11:00)
トータル50p程度をこなしウォーカー稜を完登。

通算2年かかりました。















<下り>
頂上からウィンパー稜を目指し西進、
尾根沿いには予想より多くのクレパスが発達し、左に巻く。
ウィンパーの頂上からは、グランドジョラス・ノーマルルートに沿って岩稜を下る。トレースは乏しいが、ケルンも点在するので、迷うことはない。
傾斜が緩やかなため、極力ラッペルは使用しなかったが2か所だけロープを出した。標高3、700m地点で右側に向かってラッペルし、雪原に出る。
70度くらいの急な雪渓を150m程度トラバースする。
午後の南面となるので雪がゆるく、バイルも効かないので、落ちれば絶対に止まらないだろう。振り返ってみても、今回の山行で一番危険だった箇所だろう。
対岸のリッジに着いた後は、再び岩稜沿いを下る。
標高3、400m地点から左側に向けて、2度ラッペルする。雪面に着いたのちは岩稜を左に巻きながら、右方向へ雪面を下る。















この辺りになると、各ルートの共通の下降路となるので雪面のトレースも確かなものとなるが、古いトレースも混在するので、クレパスで分断されていないトレースを選択しながら下降する。 
標高3、030mで緩やかな尾根にたどり着き、その後は尾根沿いを下降しボカラッティ小屋に到達する。(2、805m)19:00

小屋にて一泊、朝・夕食付きとして、歩き疲れたので、着替えたのち少し休憩して、
パスタを中心とした夕食をいただく。ビールも美味しかったが、移動での道中で、幾度かBARで足を止めカプチーノを飲んできたが、ここで頂いたカフェラテが一番絶妙であった。

<5日目 8月2日>
07:30起床 09:30出発
ボカラッティ小屋から下のバス停までは3時間程度。
人気のハイキングコースだけあって、快適な登山道を下る。
バス停近くあるテラスのあるレストランに入り、これまでの行程での思い出を、話しながらビールとワインで乾杯する。
お店のテラスからは、グランドジョラス南面が一望でき、素晴らしい。

バス停から20分毎クールマイユール行きの無料のバスが出る。
クールマイユールからシャモニー行きのバスは、1日4便程度と少ない(15E)。
また、シャモニーへは、モンブラントンネル使い国境を通過するため、チケット購入時・ゲート通過に、それぞれパスポートの提示が必要だった。

<ルート全般>
全体的なルートの印象としてルートファインディングが難しい。特に前半は至る所にルートから外れる紛らわしい支点が多く点在するため、特に注意が必要である。
グレードについては、最大で5.9程度だが、常に10kg程度の荷物を背負うので、その分難しく感じる。各終了点は、ロングルートにしては、しっかりしていると思う。ただ、4級までのピッチでは、支点はほとんどなく、長いランナウトを平然とこなせる必要がある。登攀時間につては、行動を日中のみのに限定するならば、アプローチを含と下降を含め4日が標準であると思う。ルート中で出会ったパーティーは3日でこなす者もいたが、行動時間はマネしたくないと思った。重要なのは、登攀速度、判断力およびザイルワークに熟練することかな。
下降路については、ノーマルルートがベスト。比較的登られていること、他のルートの下降路になっていること等から、トレースをしっかり見れば問題ない。
ただし、歩行の持久力が必要となる。

まとめ
今回の山行は、岩登りというよりか、大きな冒険だった。

<装備>概要 
装備については、難度の高い氷はないと判断し、装備の充実より軽量化を優先した。
大きく軽量化できたのは、バイル(ペツル・ガリー300g×2人で3本)、アイゼン(ペツル・レオパード350g)靴(5.10・ガイドテニーミッド380g)妻はクライミングシューズを持参したが、私はガイド・テニーで登る。ザックは私が30L(マムート・スピンドリフト900g)と妻が25L(グレゴリー・ベルテ600g)ロープ6mm90m(2.8kg)は落ちないことを前提に選択。
ルート中で、水はほとんどとれないと思っていたが、中盤以降、雪と氷からとれるので、前半分だけあれば良いだろう。
また、ビバークでの快適性のため、超軽量テントを持参した。
寝袋は持たず、行動時のアウターで着用できるダウンと、エスケープヴィヴィでしのいだ。

共通
ロープ90m(6mm)、カム0.3~2を1セット(少なく思ったが足りた)
ヌンチャク×8本、スリングヌンチャク×7本
ビレイ器×4個、ハイブリッド10本爪アイゼン、
バイル3本(ペツル・ガリー)、超軽量テント(2人用)
水9L持参(1日:日中2L、朝晩で1.5L(2人))+融雪による補充
アルファ米(赤飯800g)、チタン鍋×1、コンロ×1
詰替え用インスタント麺×8個 、ビタミン剤、パワーバー(類似品)×24本
絆創膏、テーピング、ガムテープ、ライター、飴多数、ガスカートリッジ100g×3
トポ×2セット、ヘッデン(ハイパワー)、日焼け止め

衣類等1人分
ダウン上×2、ダウン下×1、ゴア雨衣、エスケープヴィヴィ、ツナギ×1
目出し帽、皮手×1、薄手袋×1、ヒートテック上×1、

天気については昨年反省するところもあったので、今年はmeteoblueというサイトを参考とした。